知っておきたい!何気ない一言がハラスメントにならないための職場コミュニケーション
はじめに
職場は、様々な年代や価値観を持つ人々が集まり、仕事を進める場所です。そこでの日々のコミュニケーションは、業務を円滑に進める上で欠かせない要素ですが、同時に、意図しないところで相手を傷つけたり、不快な気持ちにさせてしまったりする可能性があります。
特に近年、「ハラスメント」という言葉を耳にする機会が増え、ご自身の普段の言動について「もしかして、誰かに不快な思いをさせていないだろうか」と立ち止まって考える方もいらっしゃるかもしれません。ハラスメントについて正しく理解することは、ご自身を守るだけでなく、周囲の人々との良好な関係を築き、誰もが気持ちよく働ける職場環境を維持するために大変重要です。
このコラムでは、職場での何気ないコミュニケーションが、どのようにしてハラスメントにつながりうるのか、そして私たちが日々の会話の中でどのような点に気を配るべきかについて考えていきたいと思います。
ハラスメントとは何か、改めて考える
ハラスメントと聞くと、「強く叱責する」「性的な言動」といった明確な行為を思い浮かべるかもしれません。もちろんそれらもハラスメントですが、ハラスメントは、受け取る側が不快に感じたり、尊厳を傷つけられたり、働く環境が害されたりする場合に成立し得ます。たとえ、話している側にそのつもりが全くなかったとしても、です。
職場におけるハラスメントには、様々な種類がありますが、共通するのは「相手の意に反する不適切な言動により、働く上で看過できない精神的・身体的な苦痛を与えたり、職場の環境を悪化させたりすること」という点です。
日常の何気ない一言が問題になりうる場合
私たちは日頃、親しみを込めて、あるいは場を和ませるために、様々な言葉を交わします。しかし、その「何気ない一言」が、相手にとっては不快なハラスメントと感じられてしまうことがあります。具体的にどのような言動が、意図せずハラスメントにつながりやすいのでしょうか。いくつか例を挙げてみましょう。
- 外見や年齢に関する発言 「〇〇さんも年をとったね」「少し太ったんじゃない?」といった、相手の外見や年齢について、たとえ褒めるつもりであったとしても、個人的な評価を伝えることは、相手のプライバシーに踏み込むことになり、不快感を与える可能性があります。
- プライベートに関する過度な立ち入り 「まだ結婚しないの?」「子供はまだ?」といった、家族構成や結婚、出産など、非常に個人的な事柄についてしつこく聞いたり、立ち入って意見を言ったりすることは、相手に精神的な負担をかけることがあります。
- 過去の武勇伝や価値観の押し付け ご自身の長い経験からくる話や、昔のやり方、特定の価値観を繰り返し相手に聞かせたり、「若い人はこれだから」「私の頃はこうだった」といった比較を用いて相手を否定したりするような言動は、相手に疎外感や威圧感を与えることがあります。
- 特定の属性(出身、趣味など)に対する偏見に基づいた発言 出身地や特定の趣味、支持政党など、個人的な属性に対して決めつけや偏見を伴う発言をすることは、相手の尊厳を傷つける可能性があります。
これらの例は、「親しいから」「悪気はなかった」といった気持ちの裏腹で起こりやすいものです。しかし重要なのは、発言した側の意図ではなく、それを受け止めた相手がどのように感じたか、ということです。
自分自身の言動を振り返るためのヒント
では、私たちはどのようにすれば、無意識のうちに誰かを傷つけてしまうことを避けられるでしょうか。
- 相手の反応を観察する ご自身の発言の後、相手の表情が曇ったり、会話が途切れたり、反応が鈍かったりする場合、もしかしたらその発言は相手にとって好ましいものではなかったのかもしれません。相手の些細な変化に気づこうと意識することが大切です。
- 多様な価値観があることを理解する ご自身の当たり前が、他の人にとっても当たり前とは限りません。育ってきた環境や経験が違えば、考え方や感じ方も異なります。様々な価値観があることを前提に、相手を尊重する姿勢を持つことが重要です。
- 少し立ち止まって考える習慣をつける 何かを話す前に、「この発言は、相手を不快にさせないだろうか」「プライベートに踏み込みすぎていないか」と、一呼吸置いて考える癖をつけることも有効です。特に、複数の人がいる場での個人的な話題や、冗談のつもりで言う言葉については、より慎重になる必要があるかもしれません。
- 相手との関係性を考慮する いくら親しい関係であっても、職場という公的な場においては、一定の配慮が必要です。また、上司と部下など、立場に違いがある関係性においては、発言の重みが変わってくることを理解しておく必要があります。
円満な職場のためにできること
ハラスメントの防止は、特定の誰かが行うものではなく、職場にいる一人ひとりの意識と行動にかかっています。相手への配慮を忘れず、互いを尊重するコミュニケーションを心がけることは、ハラスメントを防ぐだけでなく、信頼関係を築き、心理的に安全な、より働きやすい職場環境を作り出すことにつながります。
もし、ご自身の言動について不安を感じたり、職場で気になるコミュニケーションを見かけたりした場合は、会社の相談窓口や信頼できる上司、同僚に相談してみることも考えられます。一人で抱え込まず、周囲の協力を得ることも大切なことです。
まとめ
職場でのコミュニケーションは、時に難しさを伴いますが、正しく理解し、少しの意識改革を行うことで、ハラスメントのリスクを減らすことができます。「自分には関係ない」と思わず、日々の何気ない一言にも相手への敬意と配慮を忘れないことが、ご自身にとっても、周囲の人々にとっても、そして職場全体にとっても、より良い結果をもたらすはずです。誰もが安心して、気持ちよく働ける職場を目指しましょう。